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しかし生活習慣を変えるには、
?生育歴や成長期の“どか食べ”など過剰エネルギー摂取の習慣、すなわち腹一杯食べないと落ち着かないなどの食行動に問題があることが示唆された。
肥満の成因は遺伝30%、環境70%といわれている10)。本例は遺伝素質があるが、環境を変えることの可能性、必要性を本人の自覚と実行に時間をかけてサポートしていくことを示唆された。本人は計算上の標準体重を理想と考えている。本例の場合は成長が止まった時の体重の90kgを至適体重とみたい。標準体重にこだわらず、将来生活習慣の変容によっては、双生児の弟と同様の80kgまでは減量の可能性があると推測される。しかしまず今回減らした体重を長期にわたって維持していくことを目標とした。
今まで2年ごとに3回減量指導(図6)をし、そのつど減量はするが次の年には体重は増加しウエイトサイクリングを繰り返した。さらに本症例の特徴であるリバウンド防止対策11)が今後の課題である。
長期減量維持、体重のリバウンドをどう防止するか困難をきわめる課題である。検査所見が改善すると患者の認識が薄れ、面接が続かない現状である。食事療法のみに頼って減量すると基礎代謝量が減少するため痩せ難く、肥りやすくなる。今までは職場環境が運動療法を併用できなかったが、今後は本人に積極的に運動を始める動機づけのサポートを継続し、生活習慣の変容は食行動、運動不足の問題をケアし体重のリバウンド防止を具体的にする方法がPOSによって示唆された。
まとめ
1.栄養指導にPOSを用いる有効性が示唆された。
2.生活習慣病はPOSによって多くの情報を知る。
3.栄養士は食事を通して他の医療者に情報を提供することができる。
4.臨床栄養指導にPOSを用いて生活習慣改善の重要性を示唆された。
文献
1)中木高夫:栄養土のためのPOS、医歯薬出版、78、1−79、7、1991,shiho Leibowitz。
2)寄崎靖子、小山勝一:コントロール困難な糖尿病の食事栄養指導、栄養指導−中年肥満女性の一事例、看護学雑誌、36/12:1119−1120.1995.
3)寄崎靖子、小山勝一、日野原重明:POSを用いた人間ドック後の栄養指導について、日本POS医療学会雑誌、2/1:80−85、1997。
4)小山勝一、寄崎靖子:肥満の人の食事、保健同人社、24−27:1996。
5)寄崎靖子、小山勝一、久代登志男、日野原重明:
人間ドックにおける一次予防として食事栄養指導の役割、健康医学、7/2:92−99、1993。
6)佐々木陽:大阪における人間ドック受診者に基づく肥満の頻度の推移と現状、第16回日本肥満学会記録、21−22、1995。
7)井上修二:肥満の考え方、栄養学雑誌、54/4:11−10、1996。
8)辻井悟、葛谷英嗣、赤澤好温:疫学調査における肥満症の頻度と糖尿病・高血圧・高脂血症、第16回日本肥満学会記録、25−26、1995。
9)寄崎靖子、小山勝一、田中ネリ:栄養指導からみた糖尿病患者の性格が血糖コントロールに及ぼす影響について−P-Fスタディから−、心身医35:71、1995。
10)衣笠昭彦:肥満と遺伝、肥満症、診断。治療の手引き。242−244、医歯薬出版。1993。
1l)大野誠:治療すべき肥満とウエイトサイクリングを防ぐ減量指導のすすめかた、New Diet Therapy12/210:18−25、.1997。

 

 

 

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